映画さながらの探偵の企業潜入調査
映画さながらの探偵の潜入調査
こんにちは。
これまでは浮気調査を主体にこのブログを書いて来ましたが今回は、『映画さながらの探偵による企業への潜入調査』を書いて行きます。
実は、弊社青木ちなつ探偵調査は依頼者さんからのご要望が多い浮気調査を全面に押し出していますが、最も得意な分野としては、結婚詐欺事案の解明解決。これは自他ともに認知されております。その証拠にこの詐欺案件ではここ15年TVなどでも多く取り上げらています。
また、西川美和監督作品。松たか子さん・阿部サダヲさんW主演 で話題を呼んだ『夢売るふたり』でも、監督みずから取材に来られ、延べ40時間以上の取材協力から、果ては助監督を連れて結婚詐欺師との直接対決の場所にも行っております。
そして、弊社取締役である現役探偵 青木をモデルにした探偵役を笑福亭鶴瓶さんが演じて下さっているのです。ストーリー自体は西川監督の脚本で、実際のお話では有りませんが映画の随所に我々にしか分からない結婚詐欺の習性が散りばめられているのです。
実際の映画、それも女性監督では日本屈指の西川美和監督がメガホンを取る作品に選ばれるということが弊社がいかにこの案件の実態を知り尽くしているかを日本国中に知らしめた作品でもあるのです。
詐欺事件もそうですが、他に解決した案件としては『痴漢冤罪』『傷害事件冤罪』なども、あまり知られていませんが実際は凄い功績を残している探偵社なんですよ。
その中でも多いのが、社員の不正を暴く『企業潜入調査』や潜入しなくとも企業の役員や社員の不正を暴くことに関しては他の探偵社の追随を許さないほどの功績を挙げている探偵事務所なのです。
それでは今回、社員200名規模の中小企業から依頼があった潜入調査を実例で書いて行きます。
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青木ちなつ探偵調査足立本社のフリーダイヤル回線が鳴った。番号表示がされている。弊社のスマホ版ホームページでは、電話のアイコンをタップすると、何もしなくても非通知でフリーダイヤルにかかる仕組みになっているので番号通知が有る場合はパソコンで検索されてかけて来られていると容易に想像が出来るのです。
探偵事務所っていまだに一般の方々にとっては、映画やTVで見るダークなイメージがあることは否めない事実なので、色んなタイプの人が居られますが、基本的に携帯番号を知られたくない気持ちがあることを私どもは知っています。スマホで電話をかける場合、非通知にするには、その番号の前に『184』を押してから番号を打ち込まなくてはいけないので、そのスマホか弊社スマホ版ホームページを検索した場合、一旦、番号をメモするかスマホに慣れた方なら、各ページを小さくしてそれを比較しながら打ち込まなくてはいけません。
最初から非通知でかかるようにしておけば手間がかからないと思いそういった設定にしています。
ウンチクはこれくらいにして・・。
事務員が電話に出て、相談内容もそこそこに、とある中小企業の社長が今から来るとのこと。
時間の合意をしてから、1時間後に事務所のチャイムが鳴る。事務員が対応しそのまま応接室に案内してお茶の用意をしている時に、相談を担当する青木が事務員に
「何人きてるの?」
「3人です」
その他は別に聞くことも無かったので事務員はそのままお茶を出して事務所に戻って来た。
筆箱とA4サイズのメモ用バインダーを持って取締役の青木が応接室のドアを開けた。
応接室のソファーに座っていた、50歳手前くらいのシュッとした顔だちの男性と40代くらいの少しポッチャり目の女性。そして、垢抜けないスーツを着た60歳くらいの男性の計3名がゆっくりと立ち上がった。
「どうも、こんにちは」と青木が挨拶しながら名刺入れを出すと、シュッとしたハンサムな男性が。
「あ、こんにちは突然スミマセン」といいながら、この男性もすかさず名刺を青木と交換した。一般の依頼者さんならば、探偵を警戒しているのか、初見で名刺を出す人はほとんど居ないのと、このメンツを見た時点で会社絡みの案件だと青木は想像した。その名刺には『代表取締役』と書いてある。
続いて、女性の方の名刺には『支店長』の肩書きがあり、少し年配の男性は『統括本部長』と記してあった。一通り名刺交換と挨拶を済ませたあと、青木が
「どうぞ、お掛け下さい」と促し、青木を含めた全員がソファーに座った。
青木はバインダーを開け、万年筆を取り出し「どうされました?」というが早いか社長が口火を切る。
ザックリと内容を要約すると、この会社は精密機器の買取と運搬をしている運送業者というのが適切なのかな。つまり、引っ越しなどの際に、引っ越し業者が運べない精密機器などを要らないならば、買取り。必要ならば運搬するといったビジネス形態。買取ならばそのまま現金で買い取る。
社員200名ほどで、30名程度が事務室で事務作業と仕事の段取りなどを仕切り。後の100数十名は、その日割り当てられた現場へトラックで向かう、前日までにその日の現場を事務所が決め。その日のメンバー構成も配車係りが段取りをする。
この社長も元々現場あがりだったそうで、かなり腕が良かったらしい。その持ち前の才覚を発揮し社長まで出世した、いわゆるサラリーマン社長であるが、その話し方や物腰の柔らかさ。人懐っこそうな性格を見ると、「ホントに社長なのか?」と思うほど気取りの無い人物。
探偵事務所に来た依頼内容は。現場へ出る社員が朝会社から現金を持って一日中(3件~4件)顧客のところを回る。つまり、客にその場で現金買取りするのは先に述べた通りなのだが、昨年からチョコチョコとそのお金の計算が合わず。いよいよ600万円ほどの不明金が出たとのこと。
現場は3人1組で、会社の車で現場に向かうのだが毎回違うメンバーと周る。仕事を終えて帰社するのがおおむね、19:00前後で、3人のうちの誰か1人がその日の日報と残った現金を事務所に持って来て、解散となるのだが、なにせ人数が多く現場から帰って来る時間帯が重なるので、会計係のところに残金を持って来るのも、クリアファイルに日報と現金(平均15~16万円)をいれて、置いて行くだけ。
それが、昨年からその中の一部に現金が入って居ないことが重なって来ているとのこと。
青木は「随分ズサンなシステムですね」と首を傾げる。
社長は「そうなんですけど、今まで何十年とこのやり方だったのですが何も問題がなかったので・・。今、考えるとなるべくしてなったことだとは思います・・。警察にも相談したのですが、あまり本腰をいれてくれる様子じゃないので、なんとか犯人を見つけることは出来ないでしょうか」
青木は即答した「見つけましょう」こういった案件は探偵歴の長い青木の得意とする分野で、青木自身もテンションが上がる。元々青木は探偵特有の浮気調査などはあまり好まず、こういった智慧を使った仕事が好きなのだ。
青木「会社内に私のデスクって作れますか?潜入したいんです」
社長「大丈夫です!」
青木「今、御社に経営コンサルタントっていますか?」
社長「経コンはいます」
青木「それなら、法務とか渉外係の肩書きの名刺作って頂けますか?」
青木の澱むことのない提案に社長の顔色は少々興奮気味になって来た。
社長「分かりました!是非その方向でお願いします」
青木の経験に裏打ちされた自信のある誤魔化しの無い説得力のある言葉にこの時点で、社長はもう青木を完全に信頼していた。
こうして、青木が会社に潜入することが決まり、その詳細を説明した。まずは、営業の中に1人探偵を入れ、実際に現場の連中と一緒に同乗し現場を回らせ、その1人ずつの性格分析から始める。それで、おおむねの目ぼしがついてから、青木が会社に潜入するといった段取りを説明した。
そうして、その翌日からまずは、弊社のベテラン探偵が現場営業として朝6:30に車で出社し社内の潜入調査が開始された。
幸いにも配車を担当をする、男性社員は先代の社長時代からの古い人物で、社長といつも行動を共にする間柄。この人になるべく毎回違う社員と同じ車に乗せる様にお願いし、弊社のオールマイティな潜在能力を持つ探偵、井口にボイスレコーダーを持たせて1日目の出勤を終えた。
結構な肉体労働なので、探偵、井口には仕事が終わった後は会社に戻らず直帰させて、身体を休めさせ。3日が過ぎた。潜入している会社が休みの日に、同乗した社員の名前と性格などをレポートにまとめさせた。
そのレポートには、3日で6名分の名前と詳細が書かれていた。
探偵、井口によるレポートには、まずは社員A 年齢30代後半
「言葉少なめで、仕事は一生懸命。新人に対しても丁寧で好感の持てるタイプ」
次にB 年齢20代前半
「会社に居る時と全くの別人で、現場に着いても車から降りて来ない横着者であるが、仕事はそれなりに出来る」
次にC 年齢30代前半
「仕事も出来て明るいムードメーカータイプではあるが。やや人見知りの傾向が伺える」
次にD 年齢30代前半
「とにかく良くしゃべる。それも自分のヤンチャの自慢話ばかりでいい加減疲れるタイプで、個人的には嫌いなタイプ」
次にE
「年齢は40代後半のベテラン。自分の仕事を着々とこなすマイペース型で、話には相槌を打つ程度で可もなく不可も無くといった雰囲気」
次にF 年齢20代後半
「Bと仲が良いらしく、仕事はかなり出来る。しかし、これもまたヤンキーや近所のヤクザの誰それがどうのこうのと、鼻につくタイプ。会社での姿勢とは裏腹に態度は横着極まりない」
このレポートを読んだ青木は、探偵 井口にもう少し詳細を聞いたが、どうしても主観が入る為、他にもいいたいことは有るが、今のところはこの程度とのこと。探偵 井口の語り口調を聞いていると、BとFのことが相当気にくわない様子が安易に伺えた。
そして、それから探偵 井口は10日間ほど探偵だと気付かれることもなく、淡々と朝から夜まで仕事をこなしていた。
探偵 井口が潜入調査を初めてから2週間ほど経った19:00過ぎ。青木の携帯が鳴った。ディスプレーには井口と表示されている。
「今日、事務所に居ますか?面白いもの撮れましたよ。よかったら今から事務所へ行きます」
との一報に青木は
「よっしゃ。待ってるわ」と返答し電話を切った。20分ほど経って事務所のドアが開く音が聞こえ井口が、
「お疲れ様です」と入って来る。青木も「おつかれさん」と挨拶もそこそこに、
「どんなん撮れたん?」と青木がいう。
探偵 井口が少々自慢げに口を開いた。
「仕事先のお客さんに、2万円程度の備品をセールスするものがあるんですね。当然それは、会社の倉庫から持って出て来てるわけですから、会社の物。それを会社に黙って売り飛ばしてそれをポケットに入れてるんです」
そう云いながら井口はボイスレコーダーを取り出し。その会話の一部始終を再生させた。
そこには、BとFと探偵 井口の3人が同乗しながら、あたり前の様に不正のやり方などを話している声が入っていた。そして車のハザードの音が「カチッカチッカチッ」とテンポ良く鳴っている音が、よけいにリアルさを醸し出す。
そこで、ボイスレコーダーから。探偵 井口が「それって僕にもいくらか口止め料もらえる?」と冗談半分に半笑いでいうと。
Fが「昼飯くらいなら奢ってやるよ・・」
これは、誰が聞いても分かる見事な会話だ。
青木はすぐさま社長に電話して「ボイスレコダーに録ったから事務所まで来てまらえますか?」と、いうと、フットワークのいい社長は最初に相談に来た3名で、1時間もかからずに事務所に到着した。
その間にその音声をノートパソコンに取り込んで、より聞き易いようにして、応接間で待つ社長達に音声を聞かせた。
この問題が発覚してから、約1年ほどの間。お金が消えた日を逆算すると、必ずこのBとFが同時刻に会社に居たことは社長達も知らなかった訳ではないが、それは他の社員達も同じように居るケースもあったので、絞り込めなかったのと。社長をはじめ、会社の幹部達は、このBとFを凄く可愛がっていたので、そうでないことを期待していた部分もあったのでしょう。
3人がその音声を聞いている時、社長達の顔はあきらかにショックを受けていることが容易に判別出来た。
そして音声は終わった。こちらから説明する必要もないほど、すぐに把握できる内容。音声が止まった後、3人は俯いたまま一言も発しない。すると社長が
「少し表でタバコ吸ってきます」といい事務所を出て行った。
この落胆ぶりはよほど可愛がっていたのでしょう。その悪だくみの話しかた、ふてぶてしさも相まって二重人格さにショックを受けたのでしょう。後日談ではありますが、弊社から帰ったその日。女性の支部長を除いた社長と本部長は、朝まで焼酎を飲んで泣いたとのことだった。
15分くらいしてから、3人は事務所に戻って来た。先程よりは少し落ちついた様子。
青木が、「これで、ある程度の目ぼしは付きましたので明日から私も皆さんと同じ時間に会社に出勤します。」
「そして、従業員の方ひとりずつと面談を行い。先ずは会社に言いたいことを聴き取りし、最後に本件の噂話。つまり想像とか噂話でも良いから何か知らないか?を、簡単に聞いてみます」と告げた。
社長達もそれに反対する理由もなく、青木の作戦に同意して翌日朝8:30に出社することとなった。
そして翌日、青木はスーツに身を包み会社へ着く手前のコンビニ。ローソンでお昼ご飯の少々大き目のおにぎりひとつと、ペットボトルの水とコーヒーを買って会社に出社した。
出社して直ぐに事務所の奥の客用の応接間で社長と支部長。そして青木の3人で、会社内の説明を受け作戦会議をしていたら、11時頃に青木の名刺が届いた。
その後、事務所の人達の前で社長が
「今日から勤務する青木さんです。みんなの意見をを汲み取ってくれる方なので、ひとりずつ面談しますのから、呼ばれた人は青木さんに協力するように」と、いい青木は簡単な挨拶をして、いよいよ探偵 青木の真骨頂である潜入調査が本格始動した。
予め、経理担当の山野氏にお願いして、社員名簿と履歴書をあずかり1人ずつの名前、役職、顔写真などを貸してもらい全ての社員をザックリと把握した。
そしてまずは、練習がてらにあたりさわりの無い、大人しそうな経理の女性の面談から始めた。探偵 青木は出来る限り腰を低くし、みずからその人のデスクまで行き。
「面談いいですか?」と声をかける。奥の客室応接間はほぼ 探偵 青木の面談部屋にして、そこに来てもらい。
「どうぞお掛け下さい」と言いながら用意してもらった名刺を丁寧に渡す。この名刺の効果は同じ会社で同じ名刺を差し出すことによって、”よそ者”感を排除するねらいである。潜入調査での極々基礎的な小手先の技ではあるが、これが結構効くことを探偵 青木は熟知している。
対面に腰を降ろすと、その女性は今からなにを聞かれるのかと、少々緊張している様子が見て取れる。その緊張をほぐす為に探偵 青木は少し強面だが優しく微笑みながら丁寧に、
「私のことはまぁ、組合長のように思って下さい。ここで話されたことは、〇〇さんの不利益になるこであれば、絶対に誰にも漏れることが無いですから忌憚(きたん)のないご意見をおっしゃて下さいね」
そう告げて、いくぶん緊張感が取れてきたところで、
探偵 青木はノートパソコンにタイピングせず、話しをバインダーに挟んであるA4用紙にボールペンで筆記する。これは、相手から聞いたことを書いているところを全てみせて、ガラス張りにし嘘が無いところを理解させる為である。
「まず、どんな小さなことでもいいですから、今の会社に何か不満の様なものは無いですか?」と、聞く。
先程の緊張した姿とは真逆になった女性社員は、
「まずですね、制服のことなんですが、男性は上下支給なのに女性は黒系のパンツを自前で買わなきゃいけないんですけど、これっておかしく無いですか」から始まり、その制服に関しての不平をありとあらゆる角度から説明しだす。
それを聞いた、探偵 青木は作戦通り。いやそれ以上の手応えを感じた。
一通り会社の不満や満足などを聴き取りしたあと。自然な感じで違和感の無いよう。
「最後に最近、お金が無くなっているという話しがあるそうですが、なんでもイイです、噂でも想像でも。何か感じることは無いですか?」と探偵 青木が切り出した。
「お金が無くなってることは警察の方も以前来てましたので知ってはいますが、ほとんどその話を誰ともしていないので、あまり分からないですねぇ・・・」
と、何かを思い出そうといった感じでそう云ったので、探偵 青木は、
「ハイ、それでは今日はこれで終わりますが何か会社のことでいいたいことがあればいつでも私を呼んで下さい」
そう言って、1人目の社員の聴き取りが終わった、おおむね30分程度。これなら1日15人くらいは頑張れば出来るかなと手応えをつかみ。
――これは案外、らくに進行出来る。そう探偵 青木は確信を持った。
取り敢えず、事務所社員の事務員さん全員の聴き取りをし安心感の噂を広げておいて、次は事務所の男性社員連中。彼らも元々営業だったが幹部候補生と認められると、上の事務所にあがり現場には出ない。
その中でも何人かは、明らかに青木に対して敵意を持っていると思われる者もいたが、探偵 青木と面談したあとにはそのよそ者的な感じは完全に消えている。その中でも、支部長の次に期待されている男性社員は、
「こいつに自分の地位を脅かされるのじゃ・・」そんな懸念があったようだが、ひとたび青木と話しをすれば赤子の手をひねるようなもの。それが青木の探偵として、また人間力の凄さの所以(ゆえん)である。
基本的に、上の事務所社員の連中の中に犯人がいるかも?とは爪の先ほども思ってはいない。しかし狙いは「どんな話するの」と、仲のイイ社員は必ず聴き取りが終わったの社員に聞く。すると、それが自然と広がるであろう。そうして、他の社員達を安心させることと、本命と思しき営業社員達の耳に入れること。面談の最後に聴く本丸の『噂話・想像』を聞き溜めることが目的である。
そして、3日ほどで事務所の社員達との面談を終え。次にいよいよ、噂話や想像で出て来た名前などのレポートをもとに、営業社員達との面談が始まった。
それは、営業先から早く帰って来た社員からの聴き取りから始めたが、本命と目される者は出来る限り後半に回して名前の挙がってない社員から先に面談をする。これは、1人でも多くの『噂話と想像』を集める為にである。
まず、1人目の営業社員から聴き取りを始めた青木だが。事務所の社員達と然程 変わらず話しは進行していく。本件とは別な話しだが、さして大したことでは無いにしろ、会社への不満が多いのと事務所の社員と営業の社員との確執が多いことがおまけの様についてきた。
思わぬオマケを社長に報告しながら社員それぞれの性格分析を雑談の様にしていると社長は青木に「もしも、この仕事が終わったあとでもコンサルティングとして契約してくれませんか?」と、青木の眼力に社長は惚れこんでしまっていたが、あくまでも探偵である青木は、ただ笑みを浮かべて「ね・・。これが終わってからゆっくり話しましょう。私はコンサルをするような知識も有りませんし一介の探偵ですから」と、受け流した。
青木は全社員とすれ違う度に「お疲れ様です」と必ず丁寧に挨拶をしていた。そして営業社員の聴き取りを始めてから、2日目。青木が階段で下へ降りる時。今回、探偵 井口のレポートで一番怪しいと目され、事務所の社員の聴き取りでも何度か名前が出てきている、本命Fが上がって来た。Fと青木が対面するのは初めてのこと。
青木がすれ違いざまに「お疲れ様です」といつもの様に挨拶をするとFは、あからさまに不愉快な顔をして完無視。
そして、同じく大本命のBとすれ違った時には、Fを上回るほどの態度で青木を睨み付けてくる始末。この両名だけが他の社員達とは、明らかに態度が違う。
―― 分かり易い奴らやなぁ・・。
と、思うのと同時に青木はこの2人に怒りがフツフツと湧いてきた。
―― この若造・・。まぁ見とけよ、必ずあばいてやるからな。もっともっとイキッとけボケ・・。
青木はこう言った、状況が大好きでもっと怒りの頂点に達する方がモチベーションが更に上がる、少し変わった性質なのだ。
その後も聴き取りをしながら、その合間に何度かBとFとすれ違ったが、ヤハリ完無視。もっというと探偵 青木に喧嘩を売っているのも同然な振る舞い。青木が「お疲れ様です」というと無視どころか顔自体を斜め上に向けて「ふん!」とでも聞こえてきそうな態度。ますます、ボルテージは上がるがそんなことはオクビにも出さない探偵 青木。
むしろ、そんな状態を楽しんでいるかのように、ワザとBやFの姿を見つけると近づいて話しかける。当然、それでも一切無視を続けるBとF。2人共若くて身体も大きいので、青木のようなオヤジなんて瞬殺できるとでも思っているのだろう。
その後、まだ営業として潜入している探偵 井口がBとFと一緒の車に乗って会社に戻って来た時、Fが青木の車を見つけると。
「またこの野郎来てやがる」と言っていたことを青木に報告。探偵 青木はもう今更腹も立たない。その言葉を笑って受け流した。
そして、Fとの面談の日が来た。奥の応接間にいつもの様に対面で座る探偵 青木とF。青木が、
「Fさん。会社に対して何か不満とか、改善して欲しいとか何かありますか?」
と、優しい口調で聞く。Fはズボンのポケットに両手を入れ、顔を斜め上に向けながら。
「なにも無いっスよ」と吐き捨てる様にいう。他の社員とは全く違う態度に
―― 分かり易いやっちゃな・・。
と、心の中で笑う探偵 青木。
「なんでもいいんですよ、給与面なんかでも不満はないんですか?」
「なにも無いっスよ!」と全く同じことを同じ態度でいうF。
「そうですか・・。そしたら、最近会社のお金が無くなっているということ知ってますか?」
するとFは身体の向きを反対側に向けアゴは上がったままで、
「犯人探しですか!犯人探してどうするんですか!今更見つかるわけないっしょ!」と、語気を強めていうFとは会話が成立しない。
探偵 青木は、
「それがね・・。見つかるんですよこれが」と、笑みを浮かべながら言い終わると、
「それじゃ、今日は終わりますのでまた来てもらうかも知れませんがその時は宜しくお願いしますね」
Fはそのまま何も言わずに不愉快そうに、大きな音をたてて椅子から立ち上がりドアを勢いよく開けてそのまま閉めずに、応接室から出て行った。
その後、青木は携帯電話で青木ちなつ探偵調査の50代で大柄な一見、刑事のように見える探偵、須藤に電話をし、
「須藤さん。1眼レフのカメラを持ってさ。ワイシャツにネクタイして、その上にジャージみたいなものを着て黒めのズボンにスニーカー履いて、こっちに来てくれるかな」
「そう、まるっきり刑事風の姿で。着いたら連絡くれますか」
と、青木が指示を出した。
30分ほどで探偵 須藤から青木の携帯に「着きましたよ」と連絡がはいると、青木は直ぐに階段を降り須藤に、
「この横の建物が営業社員が日報書くところやから、とにかく映ってようが映ってまいがどうでもイイから。バンバン、フラッシュをたいて、ほうぼうを撮るカッコをしてくれる」
青木は、営業達が帰って来る 日の落ちたピーク時を狙い、探偵 須藤の横で指示しながらフラッシュをたかせた。机の上から建物の中のトイレまで、果ては普段誰もいない二階まで上がり、写真を撮らせた。
これは青木の作戦のひとつで、一番人の多い時間帯に刑事風な大男が『現場写真を念入りに撮っている』光景を見せるのが目的。それを見ていた社員達は、驚いた顔をして遠目でジッとその光景を見ている。
「よっしゃ須藤さんもういいよ」と言うと、探偵 須藤は暗くなった表から会社と現場建物の外観を10枚ほど撮ってから戻っていった。
探偵 青木の作戦は見事に功を奏した。探偵 井口によると営業社員達の間で、探偵 青木は刑事上がりか刑事だという噂が浸透した。
そしてその翌日、Bとの面談。今まで100名以上の社員から聴き取りをした結果、噂話や想像。最後にお金が無くなった日の同時刻に、帰社していた社員達からBとFは勿論のこと他に2名。MとAの名前が挙がっていた。
特にBは、お金が無くなった日には必ず、出社していて最後に金が無くなった日には、Bが1階で営業が日報を書いた建物。そう、探偵 須藤が写真を撮っていた建物の机の上に、Bがトイレに行く時に置いたファイルの中の現金がなくなっている、と言ったものだったので、青木は社員への聴き取りの結果、この日におおよその狙いをつけていた。
Bが応接室に入って来た。Fと示し合わせたような態度のB。探偵 青木はいつもの様にも会社への不平不満を一応 聴いたが、全く意味をなさないことが分かっていたので、そこはほどほどにして、直球で、
「Bさん15日の夜。あなたが現金を入れたファイルを下の建物で、トイレに行っている間にお金が無くなったんですよね?」と切り出す。
するとBは
「オレの事疑ってるんだろ!オレは何も知らねえよ!」
「どうせオレはもう辞めるし関係ねえよ!」
と、全く取り付く島もない。青木は、
「イヤイヤ、何を言ってるんですか?あなたが犯人なんですか?話しを聞かせて下さいよ」といい。バインダーの中のA4の紙をBに見せるように、日報を書く建物内の見取り図を書き出した。
「てめぇ・・これ以上しつこいとぶっ飛ばすぞ!コラ!」と、青木に言い放ったと同時に立ち上がって青木に顔を近づけて恫喝し、襟首を掴んで上にグッともち上げ、そのまま一番奥に2つあるロッカーまで、凄い力で押し「ガっシャン!」とロッカーが大きな音を立てながらそのままま押しつけた。
青木は少々面食らって、怒りは沸点に達していたが、落ち着いて襟首を掴んでいるBの右手の手首を片手で掴み、反対側に捻じ曲げながら、Bの左足を払うと、大男Bはいとも簡単に、そのまま右側に転がったが青木の手はまだ離れずBの動きに合わせてBからマウティングポジションとった。合気道の真似事だったがこうも簡単に想像通りに行くとは青木も思っていなかった様だ。
(因みに青木は合気道の心得はほとんどなく、得意なのはボクシング)
顔をゆがめて倒れこんだまま、ほぼギブアップ態勢のB、その騒々しい音を聞きつけて、慌てて社長がドアを開けて応接間に入ろうとしたが、青木は社長に「このままにさせてくれ」と、目で合図を送ると社長は不安な顔をしながらもそーとドアを閉めて青木の指示に従ったが、そのままドアの向こう側で聞き耳を立てていた。
探偵 青木は、Bの手首を持ったまま、それを引っ張る形でBを自然な形で立たせて、
「えらいことしてくれんねんな、話しの続きするで」
一瞬で、逆転されたBは戦意喪失。先程とはうって変わって、身体を縮じめて締め上げられた手首を押さえながら、椅子に座り直し俯き加減になったところで、青木は見取り図を中央に置いて、話し始めたが探偵 青木の手は少し震えている。この震えは緊張などではなく、感情を押し殺している怒りからくるものなのだ。
「仕事から帰って来てここに入ってまずしたことは?」
「この端っこのデスクにファイルを置いてそのまま便所に行きました」
Bのいう通り見取り図に『ファイルを置いた場所』と書き込む青木。
「その時、建物の中には他に誰が居た?」
「Oさんがファイルを置いた反対側の右端に座ってました」
「他には?」と聞きながら見取り図にOさんが座っている場所を書き込む青木。
「Mさんがこの端に立っていました」
「で、トイレから出て来た時にはそのままOさんとMさんが居た?」
「いえ、出て来た時には誰もいなくて・・。そしてファイルを上の事務所に渡したら、あくる日 休みだったんですけど経理から電話が掛かってきて「ファイルにお金入ってないんだけど知らない?」って聞かれました」
「で、なんて答えた?」
「僕はその中に入っていると確信していたので「何かの間違いじゃないの?僕知りませんよ」って言いました」
「トイレは、小便?どれくらいの時間居たの?」
「5分くらいです」
「ふーん。うんこじゃないの?小便?」
「小便です」
「小便で5分って長くない?だいたい、男の小便の時間って1分か長くて1分13秒くらいって知ってた?」
青木はワザと『1分13秒』というリアルな数字を出すことによって、統計学を熟知している様に見せかけたのだ。心理学的にいうと奇数をいれると、人はリアルさを感じるらしい。
そこで、青木はワザと自分から。
「あ!そうか、トイレを出たドアのところで誰かと携帯で喋ってたのかな?」と水を向けるとBは、
顔色を変えなながらも、「そうです!」と答える。青木はそのまま間髪を入れずに「誰と喋ってたんや?」と少し声のトーンを下げて聞くと。
Bはオドオドしながら「Fさんとです」と答える。
「でも、この状況を客観的に見ると犯人は誰と思う」
「分かりませんが、Oさんだと思います」
青木はそこまで、聴くと
「ハイ、それじゃ今日はこれくらいにしてまた呼ぶと思うけどその時はすぐに協力してよ」
と、言ってBを帰らせた。勿論全て録音している。
青木はこれで、Bの犯行は完全に確信したが、2人の言動からFが関わっていることは間違い無いと踏んでいた。これから、BとFを関連付ける方策は・・・。
少々、荒業ではあるがFを挑発して2~3発殴らせて、傷害事件も引っ付けて取引きしようかとも考えたがBをいとも簡単に床にひっくり返したことや、探偵 青木のことを警察上がりかと思っているだろうFは、今更そんな挑発には乗ってこないだろし・・。
青木はしばらく考えていたが、答えは出たようだ。
翌日、青木はもう一度Bを呼んだ。
「ところでBくんよ、会社の備品を勝手に売って小遣い稼ぎしてる噂を聞いたんやけど」
Bは顔面を引きつらせながら、
「そんなことしてません」と消え入る様な声で言った。
「ホンマやな?証拠が出てきたらどうする?」と青木がいうと、Bは無言で俯きながら何も答えない。青木はパソコンに取り込んだ、音声を黙って流しはじめた。
そこには、探偵 井口とBとFのリアルな音声がハザードの音と共に流れている。
「この声誰や?」と探偵 青木は少し低音でいう。俯いたままのB。
「誰やって聞いてんじゃい!」と、今まで聞いたこともない大声でBに迫った。
「スミマセン僕とFさんと井口さんです・・」俯いたままいうB。
「これどういう事か分かるよな?泥棒っていうんやで!」
「ハイ。僕やめます」
「お前アホか?やめて済むとでも思てんのか?話しはここからじゃ」
そう言って、探偵 青木はシルバーのアタッシュケースに入った『指紋採取機器』を出し。
「今から指紋取ってもらうからな、これは社長はじめみんなに協力してもらってるから」
この指紋採取機器は、警察が使っているものとほぼ同じ物のレプリカ。『蛇の道は蛇』という通り、探偵のグッズとして、民間の指紋採取業者からもらったものである。その時に指紋採取のレクチャーも受けている。
あらかじめ作ってあった社員、人数分の指紋を採取する用紙を用意し、そこに『任意提出書』つまり、この指紋採取は本人の任意によって採取するものである。という、承諾書にサインをさせて取ったものであるという説明をして、社長達の指紋と承諾書をBにワザと見える場所に置き、Bに指紋を採取させるためである。
以下、青木作成の『任意提出書』原本そのまま。
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指 紋 採 取 ・ 所 持 品 検 査 同 意 書 |
平成 年 月 日
先般より頻発している社内窃盗事件は、警察が介入する迄の切実な問題である事は承知されているかと存じます。
社員の皆さまにおかれましては、不愉快極まりない気持ちのまま就業していることかとお察し致します。本件責任の所在の一因は会社。つまり取締役・役員による監督不行き届で有る事も否めない事実と認知して居ります。
しかしながら、会社としましては本件をこのまま放置することは社の存亡にまで影響を期すと位置付けており、解決の一助になる方策を思考錯誤した結果。苦渋の選択ではありますが、指紋採取及び抜き打ち所持品検査を敢行致します。これは、社員の皆さまが健全に就業出来る環境を今一度取り戻す為でもあり、経営陣と社員が一丸となり本件を一日も早く解決に導く行為で有ります。何卒ご理解ご協力願えれば幸甚に存じます。
尚、本書面は任意記入です。個々の信条・理念に抵触する場合。また、理由の如何を問わず、皆さまは不同意の権利を有しております。ゆえに、拒否権を行使しても何等不利益を与えるものでは有りません。
□ 指紋採取に同意します □ 所持品検査に同意します □ 何れにも同意しません
□上記、記載の意味を全て理解した上で署名・捺印・押印した。
氏名 ㊞
住所
- 本書に署名・捺印・押印された、皆さまの指紋・所持品については本件外では一切口外及び提出・使用しない事を誓約致します。
決裁印 | 決裁印 | 〇〇〇〇〇株式会社
○○○○○○ ○○ ○○ ㊞ |
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ホントはこんな指紋など採取しても物理的には全く役に立たないのだが、Bに本格的な仰々しいもので、身の危険を感じさせる青木の綿密な陽動作戦である。
Bは黙って青木の指示にしたった。指を1本ずつ黒いスタンプボックスに青木がBの指を持って、1本1本を丁寧にグルッと指先の指紋がある部分を転がすように、スタンプのインクが付く様 両手の指紋を用紙に押させた。
そして、手のひら用の少し大きめのマスに指を除いた、手相を見る時の手のひらにスタンプのインクを付けて押させた。(お相撲さんの手形の指のないところと表現したほうが分かりやすいかな)
全ての指紋を取ったあと探偵 青木は、
「よっしゃ、ご苦労さん。石鹸で綺麗に洗っておいで」とBに告げると、Bは洗面所へ向かった。
手を洗ってすぐに顔色を失ったかの形相でBは青木に近づき。「チョットいいでしょうか?」と、「はっ?」と聞き直さなければいけないほどの小さな声で言った。
探偵 青木は、Bをいつもの奥の応接間にいざない、いつもの椅子に対面で座ったが、Bは背筋を伸ばし涙をボロボロ流し黙っている。
「全部お話しますので警察だけは勘弁して下さい」と顔を涙でグチャグチャにしながら青木に懇願するB。
Bが落ちた。
最後に金が無くなった日のことを全て白状したが。
探偵 青木は手を緩めない。
「それで?Fと山分けしてたんか?」と問うと、
「いえ・・。それは・・・」と涙がとまったBは下を向きながら答えようとしないところに、青木が畳み込む。
「言いたくないなら、何も言わんでいいよ。今から警察行こ」
「それだけは勘弁して下さい!」Bは椅子から降りて正座をし、懇願しながらふたたび涙を流し始めた。
「ちゃんと全部、話し出来るか?」と、優しくいう青木。
Bは黙って泣きながら俯いたままだったが、そのまま黙り続けている姿に業を煮やした青木は、机が割れかと思うほどの力を込めて、「ドーン!」と机を叩きつけ、
「どないするんじゃ!!」
正座して俯いて泣いていたBはその音で身体がピョコンと浮いた瞬間、
「全部話します!」
「わかった、椅子に座り」と今度は優しく声をかける青木。
BはFとの共犯関係を全て話した。『完落ち』である。いつも、Bが金を抜きその三分の一ほどをFに取られていたこと、Fはこの横領事件では、決して自分の手を汚すことはなかったらしいが会社の備品を売っていたのはFが主導していたとのこと。
青木は、最後の金が無くなった日のことを特に細かく聞いた。
「あの日、お金を取ってFさんに連絡を入れたら、近所の『居酒屋日本海』にいるから来る様に言われて、そこへ行きました。そして7万円と、そこのお勘定を僕が払いました」
「何時頃でそこには誰が居た?」
「8時頃だと思います。Nちゃん(事務の19歳の女の子)と一緒に2階の個室です」
青木はメモに見取り図を書かせ、FとN。そしてBの座り位置まで書かせたあとBにこのままここに残る様に指示してバインダーと筆箱を持って応接室から出た。
そして、社長を見つけて、
「Bが完全に落ちましたのでFを呼んでもらえますか」と頼んだ。
すると、Fが社長に愛想笑いを振りまきながら事務所に上がってきたので、青木はFを手招きして事務所の入り口付近にある少し小振りで、テーブルと椅子が4つだけ置いてある部屋へ入る様に促し、Fはそれに従うものの社長が見えなくなると同時に、青木にはいまだにふて腐れた顔で、
「なんなんだよー」と少し小馬鹿にした言い方をしながらポケットに手を入れたまま、ふてぶてしくその部屋へ入った。
青木は今までに無い口調で、
「オイF座れ」
と、呼び捨てで命令口調でいうとFは何か察したのか口答えせず青木の指示にしたがい座った。
「最後に金の無くなった15日の仕事終わりにどこに居た?」と青木が聞くと、Fは何かを思い出そうとしている振りをする。
「お前が覚えてないんやったら、オレが教えたろか?」Fの目は泳いでいるというか卓球の試合を見ているかのような、目の玉だけがあちゃこっちゃ、動き続けて止まらない。
「そこの居酒屋日本海で事務の未成年のNちゃんと飲んでるとこにBが来た。思い出したか?」
Fは身体を硬直させて、黙っている。
「そうか・・。返事せえへんかったらおのれもBと一緒に刑務所行ってこいや」
青木が吐き捨てる様にいう。
「スミマセン・・。その通りです・・。隠し事はしませんので警察だけは・・」予想外に早く落ちたF。
「そうか・・。白状したか・・。これ全部録音してるからこのまま警察へ今から一緒にいこかね?」
青木は警察に行く気はサラサラ無いが、これは青木の積年のFに対する憎悪からくるチョットしたいじめ。
「お前ここに居れよ」とそう言い残して、青木は部屋を出て事務職の男性社員を呼び「チョットココ見張っててくれますか」
とFが逃げない様にとお願いし、社長のもとに行き全て解決したこの事情を全て話すと、社長は安堵と同時になんとも苦しそうな表情を浮かべて。
「それじゃ、自主退職という形で」というが、探偵 青木は強く。
「社長甘い!十分解雇できる事件です。そんなことをすれば他の怪しい者もまだいますので舐められます。これは見せしめの為にも懲戒免職です!」と進言すると社長は無念そうな顔はしたもののそれを了承した。
青木はすぐに全てをレポートにまとめた。そして、社員全員を呼び今回の事件の顛末を訓示するスピーチ原稿を書いてほしいとのことでその原案も青木が即興で作成した。
その日の終業時に社員全員は2階の事務所には入り切れないので、1階の広い荷物置き場に社員を集合させ。社長は青木のレポートを片手に持ち。それを大声で涙ながらに読みながら、最後に、
「今回の事件の責任は全部、社長である私の脇の甘さから起こったことであります、ホントに申し訳なかった」と、言いながら社員全員に深々と頭を下げた。
完