実例 探偵による夫の浮気調査 東京編
『探偵に依頼』と聞くと。夫の浮気調査を想像しませんか?元来、探偵事務所に行って何かを依頼すると云った概念すら一般の方には皆無でしょう。依頼者さんの相談を聞いていると必ずと言っても良いフレーズが有ります。
「探偵さんにご相談をするのは始めてなので・・」
そうですよね。人生で探偵や弁護士に何かを依頼や相談をすることの無い方が、断然良い人生でありまよね。「探偵に・・」と頭に浮かんだ時点で、それはハッピーな出来事では無いことは容易に想像出来ます。
四半世紀を過ぎるほど探偵業に身を置いていますが、幸せ絶好調な人の相談を受けた記憶は無いですね。また、病院に行く人もそうでしょう。どこか患っているか、あるいは、患ってはいないか?そんな不安を抱えてそこを訪ねるのですから。
そう云ったことで言うと、探偵事務所も病院も似たようなものですね。探偵事務所には精神的苦痛や不安・怒りの原因を調べてもらい、それを探偵が解決する。
病院には身体の不調の原因を、また『不調になっていないか?』の不安を調べてもらい医師がそれを解決する、特に精神科医等。いずれも無いことが一番ですが、病気も人間関係も人生の中で、答えが一番難解であると科学的にも立証されている訳ですから。
ただ大きな違いで云えば、加齢による身体の異変は誰も避けて通れないことです。人間関係(夫婦・親子・兄弟・友人・知人全て人間関係)はそれなりに世渡り上手な方であれば然程、問題無く過ごせて自分なりに解決することができるでしょう。
浮気や不倫もまた人間関係の一環です。病気も同様で、食生活や運動。事前の検診を怠ら無ければ、それなりに長生きも出来ます。それは普段の心がけと、それを実行できる意志があって初めて成立します。
浮気と云うものは、『浮ついた気持ち』の略語で、生きると云う行為が浮ついているからこそ、欲望を理性で制御出来ないゆえに起こる事象なのです。その原因=結果(因果)は病院と探偵事務所と似通ったものだと思います。
さて、前回までは、東京での妻の浮気調査実例を紹介して来ましたが、今回は夫の(旦那)探偵による浮気調査を実録で書いて見ます。実例ですので、依頼者様が特定されない様に地域等を東京に限定しますが、実際は関東近郊等に少々書き換えてあることを先に自白しておきますが、内容は全て実例です。
4月某日。50代前半くらいの少しやつれ気味な女性が相談に訪れた。お子さんは大学生の長男と今年高校1年生になったばかりの次男が居て、IT関連の会社に勤めるご主人との4人暮らし。
その夫が昨年末から帰宅が遅くなり、最近では朝帰りも2回あったとのこと。相手の女性はおそらく会社の同僚だと思うと云う。スマホに入っている、飲み会での写真数枚に必ずその女性が横に居て、2人の距離感が妙に怪しげな雰囲気を醸し出していると・・・。
そう言われて見ればそんな風にも見えるが、なにせお酒の席なので確定的では無いにしろ、朝帰りの理由が店で眠ってしまったとか、東京の足立区にある自宅付近の駐車場に停めてある車の中で寝ていたとか、途方も無い言い訳なので、そこだけを見ても浮気は有るのだろう。それにその飲み会の後に一度、朝帰りがあったとなれば、『女性関係』が存在する確立も断然高くなる。
相談員「浮気はおそらく有るのでしょう。ただ、相手がその女性であるのか否かは然程、問題では無くってご主人を追って女性と接触したならば顔はおのずと分かりますので。ただその接触女性が写真の彼女ならば名前は調べずとも分かりますので少し無駄は省けますね」
相談員「ご主人が浮気されているならば証拠は撮れますが、その後どうされたいですか?」
依頼者「今は離婚は考えて居ませんが・・・。相手の出方次第ですね・・・。」
相談員「承知しました、それならば最悪、調停や裁判になった時に負けない報告書を作成しなければいけませんので、ラブホテルならば、2回の出入り。それと2回も追って行けば、それなりの2ショットも撮れるでしょう。」
依頼者「2ショットと言うのは?」
相談員「ラブホテルに入る前に、何度もそんな関係になっているカップルは、コンビニに寄ってからホテルに向かいます。初めて、そんな関係になろうとしているカップルが、ホテルの前にコンビニって・・。そんな色気の無いことはしないでしょう」
相談員「それとは別に食事や買い物をしているところなんかも撮れることも多いです。そうして2人の関係性、継続性を立証して行きます。」
依頼者「浮気の慰謝料っていくらくらいもらえるんですか?」
相談員「〇〇ご夫妻の場合。婚姻20年以上で、お子様もお二人いますので、もしもご離婚ともなれば女性には300万円程度の請求をして250万円くらいが落としどころですかね。ご主人からはMAXで400万円程度とお考え下さい。詳細については終わってから弁護士に聞きましょう、然程 大差は無いと思いますが」
相談員「その女性が払えるのか否かは別ですが、あくまで経験上では有りますが女性側に不貞行為の内容証明を送付して払わなかった例はほとんど無いです」
相談員「ご主人の資力はどれくらい有りますか?」
依頼者「さぁ、ハッキリはわかりませんが数年前に亡くなったお父さんの遺産がそれなりにあるとは思いますが、私には一切教えてくれないんです」
相談員「まぁ、女性に対する慰謝料は男性側が代わりに払う例も多々ありますから、そこは安心ですかね」
依頼者「あの人ならきっとそうすると思います」
相談員「それならば、取り敢えず絶対に言い訳させない証拠を撮ってから後のことは終わってから考えましょうか?」
依頼者「そうですね。」
こんな流れで、契約を締結した。怪しい日は事前にご主人の手帳からヒントがあるらしいので、それを手掛かりに調査をすることを約束して、夫の浮気調査の依頼を受けた。
翌日の朝、調査対象者である夫の予備調査。予備調査とは以前にも書いたと思いますが、依頼者さんから頂いた情報をもとに調査対象者の『実物』を確認する作業。基本、調査は会社終わりから尾行することが主になることが多い為、朝の出勤の時に会社まで尾行します。
現実の調査対象者の持ち物や歩く速度、実際の顔を確認し、会社に入るところの確認。(基本入った扉から出て来る)また、他の出入り口や、張り込み場所等を入念に調べておいて、調査に入った時 ジタバタしない為に行うものです。
急な、依頼の場合には出来ないこともありますが、やらないよりやった方が断然、作戦を立てやすいのです。女性を追う場合には、調査を実行する日の朝を狙うのが合理的です。女性は冬場は同じコートを着てくることが多いですが、夏場は同じ服を着て出社することが少ないので、調査日の服装を把握しておくことが大事です。昨今では花粉症の人が多いので、マスクを着用される方が少なくないので、初見では顔の見分けが難しくなりますから、朝の服装や靴、鞄などを把握することが大事になるのです。
そうして、調査の日がやってきた。今回の調査は定額制では無く、時間課金での契約。
それは、ある程度、夫が浮気(不倫)をしていそうな日を、裏付けのある想像が出来ることで、全て依頼者さんの勘が当たっていれば、早期決着が出来そうなので、そう計算すると。
1時間調査員3名(1名4,996円+3名)毎時14,999円(小数点が出る為1h15,000円)外泊が無く終電で帰って来るのであれば、調査時間も短く済むし。
依頼者さんがお持ちの証拠を照らし合わせれば、ラブホテルならば出入りを1回撮って、浮気相手の女性の名前と住所を特定し、弁護士さんにもお伺いを立ててOKが出れば、30万円前後で、裁判になっても負けない報告書が出来る可能性が高いことも有り、時間制の方が合理的であるためそれを選択された。しかし、依頼者さんの勘が外れた場合には定額制よりも増えてしまうリスクも説明して、相談員とジックリ話し合いをした結果、この契約に至った。
実は、時間課金制は我々探偵事務所にとっては、利益は薄いが(他社の様に高額な場合は別)絶対に会社が損をしない制度なのです。それは、調査時間と必ず比例して薄利ながらも利益は出る様になっているからでリスクが無い。
リスクを云うならば、絶対にミスは許されないと云うことではあるが、普通に調査対象者が浮気をしていれば余程なアクシデントが無い限りミスは起こらないので、この時間課金の方が無難な契約となるのです。
その点、定額制で値段を一定にすると、中々思う様にご主人(夫)等、不倫カップルが動いてくれないと時間ばかりが延々と過ぎてしまい、さすがに赤字は稀であるが、過去に大赤字になったことも実際にありました。
その変わり、メリットとしてはホントにリズム良く1~3日で済めば、それなりの利益は出るものの、調査はそんなに単純なものでは有りません。大抵、契約金額の半分程度は、係る経費で失われてしまいます。
貧乏探偵事務所の愚痴はこれくらいにして、本題に戻ります。
先にも書きましたが、先ずは予備調査。朝5:30分に事務所を1台の車で3人の探偵が東京足立事務所をスタート。朝のラッシュ時を避ける為、少し早目にスタートするのが探偵の常套。
渋滞に巻き込まれて現場に着いたは、調査対象者である夫(旦那)は、もう出た後・・。なんてことになると洒落にならないし、早めに着いて自宅付近の張り込み場所等を入念にチェックする。
現場は東京の目黒区。夫(旦那)が自宅を出るのが7:45分前後との情報。相談時にグーグルのストリートビュウで見た感じよりも、少々狭いが絶好の張り込み場所を見つけた。
車に乗っていても自宅玄関が見える場所なので、3名の探偵は7:30分頃まで、待機。その間に予めコンビニで仕入れた、簡単な軽食とコーヒーを飲みながら、玄関先を注視する。以外な展開で早く出て来られても、車から飛び出せば十分な場所だった。
7:30分を過ぎた頃に2人の探偵が車を降り、角々でスマホを操作している振りをしながら、夫(旦那さん)が出て来るのを待つ。7:50分。夫(旦那さん)が出た。車に乗ったままの探偵が、インカムで「出た」と通電。2人の探偵は例の如く、インカムのスイッチを「パチパチ」と2回押す。(得てして調査対象者は情報よりも少し遅く出て来る傾向がある意味は不明)
調査車両は直ぐに会社方面へと向かう。尾行班は朝の通勤者達に紛れて、夫(旦那さん)を静かに尾行し、夫(旦那さん)が、大森町駅改札に入り、電車を乗り継ぎ二子玉川駅で下車。通勤者に紛れ込んで追う探偵。
会社までの少し登坂になっているところの左側にローソンが有り、そこを曲がったところがローソンの出入り口だったので調査員は、何を購入しているか特定しようと曲がった途端。夫(旦那さん)がローソン前の喫煙所でこちらを向いてタバコを吸っていた。目が合った。「オットット!」と思いながらも何食わぬ顔でローソンに入る探偵。
簡単な様に思うかも知れませんが、ここが熟練探偵のなせる技で、ポンコツ探偵や素人の方はここで、固まってしまい、不自然な行動に出る。例えば、ビックリした表情で、そのまま踵を返しその場を去りながら、何度か夫(旦那さん)の方を振り返ってまたぞろ、目が合うと云う行動に出てしまいます。
朝の通勤時のひとコマですので、多少は大丈夫ですが、勘の鋭い調査対象者であれば、何かを感じ取られてしまうことも無きにしも非ず。だって、自分は不倫をしていると云う罪悪感があるのだから。
そうこうしているウチに、タバコを吸い終わった夫は何喰わぬ顔をして出勤。入って行った出入り口を確認し、他の出入り口等を見て周り、ひと段落した頃。調査車両が会社に到着して予備調査終了。
これで、夫(旦那さん)の顔、髪型、歩き方、鞄、後ろ姿を頭に叩き込めた。本調査へ向けて万全の体制が出来上がった。 何しろ、時間課金の調査だけに見過ごしや人間違いは絶対に許されない案件。これで退社時を狙って大勢出て来る社員の中から見つけ出す作業に不安は無い。
その3日後、調査主任のところに依頼者から連絡があり、
依頼者「スケジュールが書いてある手帳を主人が紛失したらしく新しいものも買って無いみたいなんです。最近、スマホにハマっていて、どうもそこに書き込んでいるみたいなんです」
調査主任「スマホの暗証番号は分からないですか?」
依頼者 「全く分からないんです。昨夜も夫が眠っている間に何度か試したのですがダメで・・・」
調査主任「ん・・。分かりました、成功するかどうか分かりませんが一度こちらでチャレンジしてみます」
そんな会話をした翌日、調査も兼ねて会社前に定時の17:30分前に調査員3名が到着。18:20分過ぎに夫(旦那さん)が同僚と思しき連中に混ざって出て来た。この夫(旦那さん)は黒ぶちメガネをかけていて、少しだけ右側が下にずれているので、判別に時間はかからなかった。
2人の尾行班探偵がその人混みに混じって、尾行開始。この季節は暑くも無く寒くもなく、探偵だけでは無いにしろ暫しの調査日和な季節。
二子玉川駅へ向かう夫(旦那さん)が自宅方面行き電車が来る方のホームに並んでいる。ひとりの探偵がその真後ろに並ぶ。素人の方は「そんなに近づいてもいいの?」と、思うでしょうが。
毎回、同じ対象者にそんなことは出来ませんが、一般の方でも電車のホームに並んでいる時、後ろや前に他人っていますよね。昨日の朝。もっと云えば今日の朝、列に並んで居た人。電車の中で横に座った人のこと覚えてませんよね。人混みは基本的に人間も『風景』のひとつなのです。
それから、電車に乗り込み身体が夫(旦那さん)に当たる程の真後ろに着いた。そして、ポケットの中であらかじめ、夫(旦那さん)のスマホの番号を押せばかかる様にセッティングしてあった発進ボタンを押した。電話が鳴っているのに気付いた、夫(旦那さん)が混んだ電車の中、不自由な様子でスマホを取り出した時に、切る。その場は一旦、スマホをポケットに戻したが、すかさずもう一度かけて3コール程度で切った。
またも、夫(旦那さん)はスマホを取り出し、着信を見る為にスマホの暗証番号を入れ始めた。探偵は予め用意した超小型ビデオ(手の中にスッポリはいるUSBメモリー程度の大きさ)カメラで、後ろから暗証番号を打っているところを撮影。暗証番号をゲットした。
暗証番号は随分と適当なもので『0000』逆にこう云った極々単純な番号の方がバレ難いのかも知れないが、でもスマホの中のLINEや写真に浮気の証拠となる様な、いかがわしい物が入っているとするならば、結構な勇気なのか、はたまた何も考えていないただの無防備な性格なのか・・。いずれかは我々探偵には知る術も無い。
結局、その日は電車の中でせっせとLINEはしていたものの、夫(旦那)は真っ直ぐ帰宅した。
その日のうちに事務所へ戻ってから、画像を確認して、依頼者のLINEへ調査主任がスマホの暗証番号を伝えると(基本的に弊社、青木ちなつ探偵事務所では依頼者の望む方法で連絡を取り合うのだが、昨今のLINEの普及でほとんどの依頼者とはLINEでの遣り取りが主流)
依頼者は「え~・・・そんな単純な・・。」と驚いていた。後はLINE自体にロックがかかっているか否かの不安は少し残るが無防備な性格の夫(旦那)であれば二重にロックをしているとは考え難いが、故意に適当な暗証番号にしているのならば中々の強敵である。
そしてその翌日、調査主任に依頼者からLINEで夫(旦那)のスマホの中身を写メした画像が何枚も送られて来た。結果、夫(旦那)の性格は前者の方でLINE本体にはロックはかかっていなかったそうで、そのLINEの中身も結構インパクトの有る内容。
夫の浮気はほぼ確定的になり依頼者の推測通り『写真の距離が異常に近い女性』が、どうやら浮気相手であることは、LINEのアイコン写真から判明した。結果、浮気や不倫に一番多い『社内不倫』であることも分かった。
(探偵事務所に持ち込まれる浮気(不倫)調査では80%以上がこの『社内不倫』なのだ。『社内不倫』については、この『夫の浮気調査 東京編』が終わったら、特集で詳しく書いて行きます。)
――それにしてもなんとも脇の甘い人なのか・・・。まぁ、得てして浮気や不倫に慣れて居ない人はこう云った無防備な人が多いのも事実ではあるが、この夫(旦那)はその中でも極端過ぎる・・・。
LINEを覗き見る術が手に入った依頼者は、ほぼ毎日の様に、夫(旦那)のLINEを見ていた。そして、次の土曜日に浮気相手と約束をしていることが判明。
この日は依頼者には休日出勤だと言っている夫。そして、待ち合わせ場所はなんと、弊社青木ちなつ探偵調査の池袋支社がある、サンシャイン60ビル地下1階から続く『サンシャインプリンスホテル』のフロントで、朝10時に待ち合わせてその後、サンシャインシ水族館に行く等と、克明な遣り取りがあったとの事。他の調査案件でサンシャイン60まで行ったことはあったが、待ち合わせ場所がサンシャインと聞くと、少々テンションが上がる調査員達。
土曜日。目黒区の自宅前に朝8:30分に調査員3名が到着。9:05分に夫(旦那)が家から出て来る前に依頼者から「もうすぐ出ます」とのLINEが入った時には尾行班2名の探偵はスタンバイしていた。
そのLINEを受けた調査主任からインカムで「出るよ」と通電。いつもの様にインカムのスイッチを2回「パチパチ」と反応する探偵2人。間も無く夫(旦那)が私服で出て来た後を、2名の探偵が、「しれ~」と後に続く。なんの警戒もしていない夫(旦那)は大森駅から京浜東北線快速 大宮行きに乗車する。調査車両運転係りの探偵にLINEで「大宮行き快速に乗車」と入れると「了解です」と返信が返って来る。
浜松町駅で山手線 東京・上野方面行きに乗り換える夫(旦那)サンシャイン行きはほぼ間違い無いと確信する尾行班の探偵はLINEで、調査車両を運転する探偵に「サンシャインへ向かって下さい」と送信。その後、有楽町で下車した夫(旦那)は有楽町線 各駅停車『和光市行』に乗換え、東池袋駅で下車してサンシャイン60の方面へ、いくぶん足取りも軽い様にも見える。
サンシャイン60前を越えて、サンシャインプリンスホテルへ入って行く夫(旦那)ロビーに入ると、浮気相手の女性は、まだ来て居ない様子。優雅なソファーに座って、何度もキョロキョロしスマホを見ながら、落ち着きが無い。
そろそろ約束の10時。その時スッと立ち上がって誰かに手を振る夫(旦那)その視線の先を見ると、いつか見た写真の女性が微笑みながら夫(旦那)の方へと小走りに近づく。その一部始終を撮って、浮気相手と夫(旦那が)ホテルの細い道を抜けて、ワールドインポートマートビル屋上のサンシャイン水族館行きのエレベーター待ちの人並みの後ろに立ち、2人が、笑顔で話している様子が窺える。
2人は一度目のエレベーターには乗り切れなかったが2機目に乗ったので、探偵1名も混ざり込んで乗り込んだ。(この様に人の多い大きなエレベーターならば探偵2名共乗り込んでも大丈夫なのだが、万全を期すことを考慮し、もう1名の探偵は乗り込まなかったこの辺りの呼吸は、経験に基づくその場の阿吽の呼吸である)
水族館の中に男同士で入るのも、少し躊躇われたので急遽サンシャイン60の青木ちなつ探偵事務所 池袋支社に事務員兼任の女性調査員が居たので急遽、応援を要請し10分後には女性調査員が到着。(こう云う展開になることは想定していたので、手際よく対処出来た)
女性調査員と男性探偵の2名が水族館に潜入し、夫(旦那)と不倫相手を見つけるのに然程の時間はかからなかった。その後、40分程度で2人は水族館から出てから、今度はサンシャインの60階にある展望台へと場所を移した。サンシャイン60に支社はあるが、水族館や展望台へ行くのは、皆初めて。女性調査員を含む3人の探偵が展望台から東京を見下ろし尾行を続けた。当然、カメラを回すことも忘れない。
30分程して、展望台から出た2人をそのまま追う探偵達。次は1階のパスタ屋へ入る夫(旦那)と不倫相手。年の頃なら40歳前ぐらいのお世辞にもセンスが良いとは言えない洋服を着た女性。夫(旦那)は相変わらず黒ぶちメガネの端が少しズレている。パスタ屋はガラス張りで、両名の食事シーンは色々な角度から撮れた。
一通り撮った後、探偵達は女性調査員を返して2名で追う事とし、女性調査員が探偵2人とサンシャインシティ―ビルの玄関口で待つ、調査車両運転班の探偵にファミリーマートで買った簡単な食事とコーヒーを手渡してから、事務所へと戻って行った。
食事を済ました、夫(旦那)と不倫相手はサンシャインシティーを出、角にファミリーマートのある交差点で信号待ちをしている。2人は信号が変わり横断歩道を渡って、ファミリーマートへ入って行く。
――ん・・・。ホテルへ入る前の前兆行動・・。サンシャインプリンスホテルへ行く?
そんな事を探偵達は想像した。しかし、ファミリーマートからコンビニ袋を2つ提げて出て来た、この不倫カップルはそのまま、サンシャインの方へは行かず、池袋東口の雑踏の方へ歩き出した。周りは賑やかな店舗が軒を連ねる通りをいつの間にか手を繋いでいる両名。
――益々、ホテル行きの前兆なのだが・・サンシャインプリンスホテルは反対方向・・。
そんな探偵達の想像など、お構いなしの夫(旦那)と社内不倫相手の両名。すると、いとも簡単に如何にも『ラブホテル!』と云う型の古めなホテルになんの躊躇いも無く入って行った。
追っている探偵達のカメラは違う方向からその瞬間を撮る。そして、調査主任がそのまま1人で、そのホテル玄関から入って行き両名がラブホテル独特のタッチパネルを押しているところを撮って来た。
基本的にラブホテルは、自分達の顔を他人に見られたく無いので後ろに人の気配を感じてもほとんどのカップル。不倫・浮気・夫婦・恋人に関わらず、振り向いたりはしない。
ただ、全ての不倫カップルがそうである保証は無く振り向かれた時の対処方もシッカリと心得ている。
さぁ、ホテルの入りは捉えたが。このホテルは車を停めるところが無く、出て来るところを押さえるには2カ所ある出口に対して何時に出て来るか分からない2人を、探偵用語でいうところの『立ち張り』言葉通り。探偵はずっと立ったまま出て来る瞬間を撮らなければいけない。
ただ、想像で云うならばコンビニで買った物の中に缶酎ハイやら、ビール等が透けて見えていたので『30分や1時間では出て来ないだろう』この想像力が過信に繋がり、大変なミスとなるので探偵の決してしてはいけないことのひとつ。
不倫カップルの姿はもう探偵の目では目視出来ない状況。ラブホテルに入った男女全てが、ただSEXだけをしている訳では無いかも知れない。
ましてや不倫である。色々と寝物語で不倫に対する、罪悪感や焼きもちで喧嘩に発展するやも知れないし、逆に背徳感を楽しんでいるかも知れないが・・。
また、ホテルの対応が悪いからと言って顔の見えない受付けのおばちゃんと揉めて、ホテルを出る可能性だってある。不倫だけでは無くとも普通のカップルであっても部屋で何が起こっているかなどは分からない。
だから、ホテルに入ったその時から出て来ることを想定して探偵は行動しなくてはならない。ホテルの出るところを撮るには出入り口に、定点カメラ(回し放し)を一台足元に置いて、普通のカメラはいつでも起動出来る状態で持っている。
これが車が停めれて、車内から見渡せる場所を確保して出来る場所ならば結構、探偵も楽に出て来るところを撮れるのだが、こう云った場所にあっては、かなりキツイ仕事となる。ホテルの垂れ幕を見るとサービスタイムが土・日・祝 6時間で4,800円と記してあるので、現在時間は昼の13時過ぎ。この時間帯だと定石通りビッチリと6時間は居ると腹を括らなくてならない。
19時少し前。夫(旦那)と社内不倫相手の2人が出て来た。差しで計った様に6時間ピッタリ。池袋駅で2人が別れた後、夫(旦那)はそのまま放置して、社内不倫女性を追う。山手線 新宿・渋谷方面行きに乗車した浮気相手の女性は、品川で降りた。
そのまま付いて行くと小振りな聞いたことの無いスパーへ寄って、晩御飯の用意と思しき物を買って出、そのまま歩いて7~8分の戸建住宅に入って行った。玄関先にはご丁寧に表札まで上がっていた。
こちらも既婚者らしいがこの時間に晩御飯の買い物をしているくらいなので、子供は居ないのか?それとも、やましいことをして来たことを少しでも逸らす為の買い物なのか・・・。
翌週、月曜日に小菅の法務局に行って不倫相手の土地建物の謄本を取って、あの戸建て住宅の名義人を特定。ローンは未だ残って居るようだが、3分の1の持ち分に女性の名前があったので、おそらくこれが不倫相手のフルネームであると想像した。
そして、依頼者にLINEで報告すると、依頼者も調べていてくれてやはり、あの写真の女と氏名が一致した。これで、不倫相手の住所とフルネームは特定出来た。後、継続性を担保する為に、もう一度ホテルの出入りを撮ることとなり、その日を依頼者の情報を待つこととなった。
自由に夫(旦那)のLINEが見れる様になった依頼者の情報は的確だった。今週の金曜日の会社終わりに食事をする模様である。そして、探偵達は夫(旦那)の会社前から張り込みを開始。19時少し前に従業員専用扉から黒ぶちメガネの夫(旦那)が現れた。メガネは今日も少し右側が下がっていることは30m程、離れたところからでも認識出来た。
夫は二子玉の駅 改札の手前で、立ち止まり誰かを待っている様子。その様子がとても単純で探偵で無くとも分かる雰囲気。その後、先日の社内不倫相手が現れ、耳元で少し何かを告げてから2人は別々に歩き出した。二子玉の駅は会社の同僚が色んなところに居るのを考慮しているつもりなのだろうが、若干の脇の甘さが見える。
夫(旦那)の方を追いかけ東急池上線、旗の駅で乗換え東急池上線五反田行きに乗車する夫(旦那)
―― 五反田のホテルか・・・?
結果、五反田駅で、不倫女性と合流。どこまでも単純で分かり易い人だ。そのまま2人は五反田のラブホテル街でコンビニに入り、そのままホテルへ。今回は車を駐車して、出て来るところを狙い打ち出来る場所だったので、ホッとしながら3人の探偵は、待機。結構早い9:45分頃に2人は出て来たが、これ以上追う必要は無いので、調査は全て終了した。
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